港区 白金高輪の心療内科・精神科|白金メンタルクリニックの一言日記

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一言日記 心の医者が読み解く今日の世相

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一言日記~ 心の医者が読み解く今日の世相 ~

(2016年4月30日 08:54)違法阻却事由 突発災害や事故に備えて

違法阻却事由
生命の危険を予見する緊急に遭遇した貴方は、その生命を救うべく行った行為は違法であるが、それを除いて救命の選択肢はなく、已むを得ず行なった行為は処罰しない。いわば、法律を越えて行える救命救急の最後の砦である。ここでは、その一例を掲げ、多くの方の勇気につなげたい。

例一、ある日、貴方は道を歩いていた。
 垣根越しにお年寄りが首を吊ろうとしているのみとめた。さて貴方は110番をするか?119番をするか?答えはいずれもNOである。正解は、垣根を飛び越え、植木鉢でガラスを割って室内に飛び込み、既にロープを首にかけ椅子を蹴る寸前で抱きとめること。

 行為上は器物損壊や不法侵入の構成要件を充分満たしている。然し賞賛こそあれ貴方を責める人は誰もいない。
例二、学校の養護教諭である貴方。休日外にでかけたとき、見知らぬ方が突然、喉に異物を詰め呼吸停止に陥った。必死にもがく其の方は、やがてグッタリと力が抜けていく。まず呼吸を確保とばかり、見ようみまねで、近くにあったカッターナイフで喉頭部を切り、三本ほど束にしたコーヒー用のストローを差し込み、救急隊に引き継いだ。例え、貴方が救命救急士や看護士の資格を有しても、医師の指示なく勝手に行なったとして免許は飛んでしまう。事実はそうではない。まず行政に、この正当性を判断する権限はない。唯一裁判所だけが貴方を救ってくれる。違法阻却事由が認められるからである。

 日本医療は、医治とも書き、最初に診察と治療がメインである。欧州の救急医療は、観察と措置が先に来る。本質的な違いがここに見てとれる。
いわゆる、緊急時には先ず措置ありき!措置は悪化の阻止と専門医へのジョイントを経て、初めて専門医引継ぎ(治療)へと移行できる。出血している部分を手の平で圧迫、これを手当てといい、治療とはいわない。こんな話をすると決まって動脈アプローチによる圧迫止血や陽気圧迫止血、緊縛止血と突っ込みを入れる人が出てくる。こいつは素人なので相手にはしない。

では、路上で気管切開と言えば、医師はおろか、看護士でさえ尻込みしてしまう。然し、この手技は、申し訳ないが国外では看護兵スキルか、少し学んだER救急士のレベルで、そんなに難しいトレーニングは要しない。冷静であれば誰でも可能である。私は、災害現場や、事故現場で何度かこれを行った。心肺停止の場合、AEDなんて眠たいことを言っている暇がない場合も有る。仕方なくカッターナイフで開胸し、胸骨を1~2本、折って、手技による心臓への直接マッサージに及ぶこともある。既に常識中の常識である。日本だと責められる。専門外に口を出して、状況を悪化させてしまうではないか。あまつさえ道端なら感染症云々。あんた責任を取れるのか。いわゆる、救命を急ぐ前に、まず、責任と秩序のセットが並べられる。ここでも唯一貴方を救うのは違法阻却事由!その一文だけである。既に言い古された言葉であるが、君の救命措置が失敗、それが原因で命を落としたらどうするのか?では、次の手順を正確に踏んでみよう。①119番に通報する時間。②出動命令と緊走及び現着時間。救急隊が措置をする時間。受け入れ病院を手配する時間。落命には充分すぎる時間であろう。それでも救命率は向上しているというが、向上した結果をチャート化して発表しても真実とは言えない。もし、貴方が医療関係者で、もし貴方に勇気があれば、少なくとも、この五つの無駄は積極的に排除され、その人への救命率は格段に向上する。

アジア路線の航空機内で放送がある。誰かお医者様か看護士さんは同乗していませんか?そんな機内放送に手をあげる人は少ない。欧州路線だと、必ず何人かが名乗りでる。軍隊で看護教育を受けた人まで手をあげる。獣医さんも手をあげる。情けない話であるが、これは、ある機関によって統計が取られているのを私は知っている。残念だが秩序と責任の前に命が置き去りにされている。ぜひ違法阻却事由を知っていただきたい。その上で自分が何ができるか。救急技術のみならず予防司法も学んでいただきたい。ここで、ぜひとも以下のことだけは覚えていただきたい。これら行為に、厚生労働省も、消防も、保険所も、はたまた警察までも、違法阻却の可否を判断する権限は与えられていない。唯一は裁判所の判断である。大規模地震や災害が叫ばれるなか、行政にこの判断権を認めたら大変なことになるからである。

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